平成14年 3月 日発行 No.4
・本年度の「奈障研だより」はこれでおしまいです。石塚先生の講演のメモを載せたら2ページになってしまいました。今年、奈良市の幹事として奈障研に参加し、バイタリティあふれる他郡市の先生方にお会いし、たくさん学ばせていただきました。奈良市の先生方に、この通信で少しはお伝えできたかな、と振り返りながら最終号をお届けします。4月からは新しい改革の年です。いろいろな情報に惑わされることなく、頭の切り替えと、頭の整理をしていかねばなりませんね。
(文責 奈良市幹事 朱雀小学校 八木)
平成13年度第5回理事幹事会 H14年 1月18日(金)
桜井市まほろばセンター
1. 平成13年度 第33回奈良県障害児教育研究大会について
今回は大会打ち合わせとして、拡大理事幹事会として、当日の会場である、まほろばホールにて行われました。参加人数の確認がなされましたが、この1月の時点で、奈良市からの申し込みは7名しかありませんでした。大会当日は、飛び込み参加も含めて奈良市からは30名ぐらいでした。
2. 分科会打ち合わせ
全体的な説明の後、分科会ごとに提案、司会、記録の担当が顔合わせし、打ち合わせが行われました。
平成13年度第6回理事幹事会 H14年 3月8日(金)
大和郡山市平和公民館
1. 第33回大会の反省
参加者数 奈良市 32名(宇陀郡、香芝市、北葛城郡も32名_33名でした。)
参加者総数 361名
→ 来年度の会場は大和郡山市を予定
2. 要望書の回答について
3. 今年度の事業について
4. 平成14年度の理事・幹事・専門委員の選出について (締め切り4月26日)
5. 平成14年度第1回理事・幹事会、総会について
5月20日(月)いかるがホール 14:00_
年次総会、設置校長会総会 (年次総会案内配布)
5月30日(木)大和高田市 さざんかホール
6. 全特連・近特連大会について
全国大会の予定 平成14年度 京都府大会 (一次案内配布)
平成14年10月30日(水)全体会
31日(木)分科会 [11月1日(金)視察]
会場:京都国際会館
記念講演:北山 修 精神科医、エッセイスト、
九州大学大学院人間環境研究員・医学研究院精神分析学教授
奈良県担当 以下の役割が担当となっています。
・第1分科会 早期教育 司会
・第7分科会 少人数学級の指導 司会 、提案 、助言
提案 大和郡山市立片桐小学校 白井 宏幸 先生
・第11分科会 作業学習 司会
近特連の今後の予定
H14年度 京都府大会(全国大会と重複開催)
H15年度 滋賀県大会
H16年度 奈良県大会
7. 配布物 奈病連 会報
第33回奈良県障害児教育研究大会報告
大会テーマ:「特別支援教育の在り方を考えよう」
日時・会場: H14年 2月7日(木)桜井市民会館 他
_全体講演_ 「 これからの障害のある子どもへの対応」
文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課
特殊教育調査官 石塚謙二先生
石塚謙二先生 北海道出身。千葉大学。養護学校の教員をされ、千葉県の障害児教育センターを経て、H8年から国立特殊教育研究所へ、H12年から文部省。
*石塚先生は養護学校の教員から現在の職に就かれているので、話の中にも現場での実践や経験が出てくる、気さくな方でした。以下に全体講演と特別分科会の内容の一部を紹介いたします。
・講演題目をいただいているが、今日は「今の障害を持つ子どもの教育はどの方向に向いているか。」を報告したい。
・今の障害児教育界は、教育界全体もだが「ターニング・ポイント(Turning Point)」にある。これまでの考え方を否定するのではなく、キーワードを「特別な教育的ニーズ」として変わっていかなければならない。
・私たちの社会はみんなが同じであればという、画一的、一斉的な考えにとらわれすぎていたのではないか。これからはセーフティネットを考えながら個々の力をどう生かしていくのか、が課題である。
・ADHDの問題も含めて、通常の学級の指導をどうするのかを考えていかなければならない。その一環として、ADHDの対応もある。これからは通常学級の学級経営を考えないといけない。
・今後の対応は種類や程度ではなく、ニーズをふまえてより良い方向をめざしていくという課題を持ちながらシフトしていかなければならない。
・これまでの特殊教育を踏まえて、特別支援教育を考えていかねばならない。
・現在、まだ学校教育法には「特別支援教育」という文言はない。
・特殊学級は設置義務のみがあり、措置規準は国は決めていない。措置権限は市町村にある。特殊学級と養護学校は措置規準が違う。
・従来の障害種別・場に応じた教育からニーズに応じた教育へ。量的な設備から質的な努力へ。
・今後、就学規準や手続きが変わっていく。
・特殊教育の対象児は、義務教育全体の1.3%である。盲・ろう養護学校在籍児は0.4%しかいない。通常児童一人あたり60万_100万円のお金がかかるが、特殊教育対象児は一人1千万ぐらいかかっている。(500万_2000万の間ぐらい)
・外国と比較しても意味がないが、誤解が多いので外国の様子を紹介する。欧米ではインクルージョンは哲学的・運動論としては広まっているが、実態は違うことも多い。フランスなどは重度の子どもは教育の対象外である。養護学校対象児は日本0.4%に対して、英1.4%、オランダ5%、独3.8%。
・教員数は養護学校は子ども1.5人に対して教員1人、特殊学級は子ども2.6人に対して教員1人。日本はすごい数の人間とお金をかけて特殊教育に取り組んできた。これでまだ人が足りないと言うと世間はどう思うか。この1.5人に1人の教員を社会資源としていかに活用するかが今後の課題である。
・文部科学省では、程度の規準、手続きのあり方を見直している。S53年の309号通達によって設置が事実上義務化されていた就学指導員会であるが、地方分権一括法により、設置義務、措置規準ともに現在、法的根拠がない状態である(失効中)。位置づけを明確にしていかねばならない。
・自閉症について…自閉症の特性の違いを考慮して教育するのが望ましい。制度上では重複障害には自閉症は入っていない。情緒障害と言うけれど、発達障害と心因性の障害(不登校・ひきこもり等)を分けて考えた方が良いのでは。
・免許の問題…養護学校で50%の免許所持率を100%にしたい。養成や講習は県の対応による。免許はなくても、経験から専門性はある、とよく言われるがそれはやはりダメではないか。
・文部科学省が施策として取り組んでいること
教育相談の体系化 全国40県に依頼中
LDに対する専門家チームでの対応 15県がパイロット事業、全県で対応。
就業促進の調査 校長会へ依頼 H14年はITP(移行プログラム)を5県で活用。
交流活動の促進 居住地交流を学校教育へ位置づける。
政令改正のパブリックコメント募集
免許状について 県教委の仕事である。
特殊教育調査官を1名増員 石塚氏 と 柘植氏
研究開発校 LD・ADHDについて研究開発校で研究
高機能自閉症については厚生労働省の支援事業、全国で8県始まる。
養護学校の専門性を高める研究 16件
・特別支援教育調査官として今やっていること
名称の見直し
障害種別を超えた養護学校・養護学校のセンター化
LD・ADHDについて ADHDの全国4万人調査 不登校13万人以上の数が特別支援教育の対象ではないかと考えている。
・石塚氏として考えていること
新しいシステムを県のエリアごとに作っていかなければならないのでは。
新任や新担任の4月をだれがサポートするのか。T、Tや加配の教員はだれがサポートするのか。あるエリアにおいてそのエリアの教育力をどう高めるかのサポート体制が必要。養護学校のセンター化によって対応してもらいたい。
横のつながりが大切である。連携はそれぞれが精一杯やらなければ連携が出来ない、他人任せではいけない。
_特別分科会_
香芝中からは中2の時に自分のLDを深く認識し、自ら障害児学級入級を希望し、障害児学級で落ち着いて学習できるようになり、LDも受け入れてくれる大分の高校へ進学することになったケース。天理南中からは小学校時代障害児学級だったが、LDの診断を受けたので中学校は普通学級で学んでいるケースの報告があった。会場からも多く意見が出され、石塚先生にお話いただく時間が短くなった。
(助言の中から)
・LD、ADHD、高機能自閉症、アスペルガー症候群などの名称や症状等の簡単なまとめをしていただく。
・この分野の指導内容はまだまだ研究途上である。今までの特殊教育界では解決できない問題である。
・通常学級の担任としてはADHDやLDの指導について「後追い」は難しいのでできるだけ「先行」が望ましい。
○先行的指導 事前伝授 準備 先行 ほめる
○量 問題を減らす。学級指導において
「10分間で3問の子もいれば5問、10問の子もいるよね。ちがいがあっていいんだよね。_」と、ちゃんと説明する。
学級経営・クラス作りが大切。
○環境 もめない子がそばにいるというのも良い。環境も大事。
キーキーとなる子や先生はダメ。
ペアチューターを工夫する。
・スペルガーや高機能自閉症について
心情的な言葉は難しいので、使わないほうが良い。わかりやすい指示、状況を心がけるのが教師の課題。
周囲の理解が大切。週1回とか月1回とかで十分に話を聞いて上げられる場が必要。
スクールカウンセラーは発達障害について知らないことが多い。
2次障害、3次障害に対応できるか。
からかわれている、ということを知らないということは問題である。こう言われた時はこうする、という回路を作ることが大切。
・最後に特殊学級の先生方にお願い
校内のニーズのある子についてのコーディネーターになってほしい。
自分で出来なければ、養護学校の先生に聞く。
コーディネーター役は校内で誰かがやらなければならない。(障担、教務)
余談だが、イギリスへ行った時に、しきりに「センコー、センコー」と言われた。何で英国人が「先公」などという言葉を知っているのかと思ったら、「SENCO」であった。ちゃんとした役職として学校に「センコー」がいたのである。
S スペシャル
E エデュケーショナル
N ニーズ
Co コーディネーター
日本にも「SENCO」役が必要であろう。
(以上、個人的メモから掲載しました。講演録はまた奈障研から出ると思いますのでそちらをご覧ください。)